19世紀、嘘と詐欺にまみれたパリの社交界とマスメディア業界を描く、バルザック原作のフランス映画「幻滅」

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19世紀フランスの文豪オノレ・ド・バルザックの小説「幻滅 メディア戦記」を、グザビエ・ジャノリ監督が映画化した「幻滅(原題 Illusions perdues)」が日本公開となる。

19世紀前半。フランスでは恐怖政治が終焉を迎え、宮廷貴族たちが享楽的な生活を謳歌していた。詩人としての成功を夢見る純朴な青年リュシアンは、故郷から貴族の人妻ルイーズとパリへ駆け落ちするが、世間知らずで無作法な彼は社交界で笑いものにされてしまう。生活のため自由派の新聞の記者になるが、お金が全てを支配する世の中で、 新聞の編集者たちは、広告主にへつらい、挑発的な文章で論争を起こし、世論を煽ることしか頭になかった。そんな同僚たちに影響されたジュリアンは、当初の志を忘れ、虚飾と快楽にまみれた世界で堕落していく・・。

既得権を守ることばかり考えている貴族たち、フェイクニュースやステルスマーケティングが横行するマスメディア、と19世紀半ばに書かれたとは思えない、バルザックの小説を見事に映像化した社会派人間ドラマ。エンターテイメント性も備え、あっという間に2時間半が過ぎてしまう、見応えのある作品だ。

フランソワ・オゾン監督作「Summer of 85」で一躍有名になったバンジャマン・ボワザンが主演を務め、「アマンダと僕」のバンサン・ラコスト、監督としても活躍するグザビエ・ドランと若手俳優たちの好演が光る。そこにフランス映画界の重鎮ジェラール・ドパルデューをはじめ、セシル・ドゥ・フランス、ジャンヌ・バリバールたちベテランが出演する豪華キャストだ。

2021年の第78回ベネチア国際映画祭コンペティション部門出品され、2022年の第47回セザール賞で作品賞を含む7部門に輝いた話題作である。

4月14日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリー、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開
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2022年/フランス映画/フランス語/149分

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